二月のストーブ

 少し前に雪が降って、それがやっと溶けた。
 町は例年以上に冷え込んでいる。

 窓越しに望む校庭は薄暗く、遠くの木々は寒そうに揺れている。ストーブのすぐ横だから、教室にいる彼女は寒くない。年明けに席替えがあって、彼女の席は窓側の一番前になった。授業中によく外を眺めたが、先生に気付かれることはあまりなかった。だから、教室の隅というのはどことなく孤独な感じがして、それが楽しかった。

 そんな二月のある日、誰もいない教室で彼女はとても困っている。
(この席のせいだ)
 と彼女は思った。その問題は、彼女にとってとても大きなものだった。今までの短い人生の中で一番悩んでいるのではないかとさえ思えた。ため息をついてもう一度外に目をやると、帰宅途中の生徒たちが見える。みな色とりどりのマフラーをしている。窓ガラスが彼女の溜息で少し白く曇った。
(問題はストーブだ)
 窓の外から目を離す。彼女の前では鈍い音を立てながらストーブが熱風を吐き出している。
(こいつのせいだ)
 そのストーブは、冬の間一日中教室を温めていて、彼女の足元はいつも暑いくらいの熱気に包まれる。
 彼女は肩を落として机の上の小さな白い箱を見た。出来は悪くない。それなりに考えて作ったのだ。好みがわからないので、手のひらに乗る程度の箱に入る分だけ作ってある。箱も、嫌みのないように気を付けながらにマスキングテープで装飾した。あとは渡すだけのはずだった。
 (もうやめようか)
 頬杖をついて考える。残された時間も無かった。彼はもう帰るかもしれないからだ。既に帰った後かもしれない。そう考えると気分はより沈んだ。
 なにげなく、昼休みに一度中身を確認した時すでに、その中身は溶けていた。注意を怠った自分に腹がたち、それからずっと憂鬱な気分でいる。
(でも)
 と彼女は顔を上げる。
(もしも、こんなことになっていなくても、きっと私は同じように悩んでる)
 立ち上がって、ブレザーを羽織ると、少し気が楽になった。
(だから、ちゃんとしよう)
 彼女は箱をポケットに入れ、カバンを持って、古い暖房機のスイッチを切り、足早に教室から出て行った。

 しばらくして、古くから教室に置いてあるそのストーブはブルブルと震えてから停止した。
 きっと外は寒い。

genki


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